カート2
バンは寮に到着。9月11日の夜だったが空気が肌にひんやりと冷たい。1994年当時のアメリカにおいてその日は、1年のうちの365分の1日以外に意味を持たなかったけど、ウチの姉にとっては21回目の誕生日だった。
車から降りて真っ先に飛び込んできたのは突き刺すような針葉樹林の香りだった。間髪いれずにランドリーからの、洗剤のにおいが続く。その瞬間からその2つのにおいは「アメリカのにおい」として脳裏にすりこまれた。
強烈なダウンタウンの夜景に、独特な2つのにおい。視覚と聴覚が刺激されっぱなしだ。そうくれば次は「音」だ。
寮についてはじめて紹介されたのがRA(Residence Assistant)のChrisだった。テレビで観た事のあるアメリカの陽気なコメディアンを思いおこさせる笑い声が印象的だった。その音はカタカナでの記述が一番似合うと思う。
「ハッハッハー」
もうひとつ印象に残っているのがその時、なにか必死で質問したんだろう。ちょっと考えたあとに、Chrisが申し訳なさそうに言ったのが
「I have no idea.」
おお!
「I have~」(もってるぜ)
と言っておきながら、続く文章で
「~no idea」(アイデアは、なにも)
つまりアイデアはない、わからない、とのことか!
この語句の並べ方・・・英語だ!
このChrisとの短い短い対話で、脳が英語モードに切り替わった気がする。このファーストコンタクト(?)はその後もずーっと、今も新鮮な驚きとしてメモリーされている。
続いたりして。
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