対岸の彼女
昨日の帰りの山手線、おれは優先座席に座っていた(あ、車内ガラガラだったからね・・・。)。向かいには、生真面目そうな女性がひとり。歳はオレと同じか少し上くらいだろうか。
ヒザとヒザ、つま先とつま先、そして踵と踵をみったりと閉じ、イマドキちょっと珍しいくらい姿勢のいい人だった。
田町で男が一人乗ってきた。ラフな服装の、大柄な男だった。彼女のとなりに腰掛けた男は、おもむろに携帯電話を取り出した。その刹那、彼女は男の肩をぽんぽんと叩き、窓の外の何かを指差した。
いや、そうではなかった。どうやら彼女が指差したのは、窓に張られた「優先座席付近で携帯使うな」というステッカーのようだ。
おおっ
迷惑行為を注意されたヤカラが逆ギレ→暴行といった事件が世間を騒がす昨今、勇敢な女性だなと思った。男はぽかんとした表情で彼女の指の先を目で追い、彼女が言わんとしていることを理解した次の瞬間、
「あ、すいません」
えーとえと・・・。
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